なぜ税務調査で棚卸資産が見られるの?

2021-05-31

税務調査官が必ず確認するポイント

皆さん、こんにちは。元国税調査官の福元です。

本日5月31日は3月決算法人の申告期限日ですね。

今月は申告のために1年間の帳簿を見直した経営者の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

当事務所もお客さまの申告書を期限内に提出するために、連日慌ただしく過ごしておりました。

そんな決算期末に行う作業の一つに「棚卸し」がありますね。
こちら、税務調査官がよく目を光らせているポイントなのはご存知でしょうか?

なぜなら調査官は、棚卸しは不正計算をしやすい項目だと考えているからです。

仮に経営者が不正計算を行おうとしたとき、売上や経費の科目を実際の金額とは違う数字で計上すると
取引先の帳簿との間に矛盾が生じます。

それに対し棚卸しの計上額は取引先とは関係ない科目のため、
ある意味簡単に金額の調整が出来てしまいます。

ですから調査官は必ず棚卸金額が適正に計上されているかを確認するのです。

ここからはどうやって棚卸計上金額の調査を行うのか、具体的な方法をご紹介します。

調査対象者が倉庫に商品などを置いている業種の場合、
調査官は高確率で調査日における倉庫の状況を確認します。

経営者や在庫の管理担当者に実際に倉庫を見せてもらい、
その場で商品に関する質問などをしながら、実は様々なポイントを確認しています。

これは一例ですが、

・「売れ筋の商品はどれですか?」
 ⇒反対に売れ残りやすい商品や、ずっと倉庫に保管しているものがないか?

・「普段はどんな帳簿を使用して在庫を管理していますか?」
不正計算をする余地がないか?

・「期末の計上金額のもとになった原始資料は残っていますか?」
期末棚卸しに関する経営者の認識は?

・「商品の発注をかけてから倉庫に受け入れる一連の流れは?」
イレギュラーな取引や、単発の取引などがないか?

調査官は上記のような意図をもって、雑談を交えながら質問を繰り返します。

その他、帳簿調査で指摘されるポイントとしては、

・未着品
期末に仕入れた商品のうち、棚卸しを行った日までに届かなかったものが計上されていない。

・預け在庫
業者の倉庫に預けてある商品が計上されていない。

このようなものがよく見られます。

上記2点は棚卸しを行うときに目で見て商品を確認できないため、
計上もれとなることが多く、必ず調査官から確認されます。

最後に簡単にできる棚卸しに関する税務調査対策をご紹介します。

それは原始資料を必ず残しておくこと。

商品を数えるときに使用したメモなどを捨てずに残しておくと、
複数の人間が確認した事実などを証明することができます。

手書きのメモをもとにエクセルにまとめた後、そのメモを捨ててしまう方が多いですが、
データを作成するときに不正を行っていない証拠としてメモも合わせて保管しておくことをお勧めします。

たかがメモですが、調査官から「何か不都合なことがあるから捨てたのかな?」
と不審に思われないためにも、安易に捨てるのは避けた方が無難です。

なぜなら調査官は「あるはずのものがない」ことに非常に敏感に反応するからです。

何かと忙しい決算期末ではありますが、適正に棚卸しを行い
その際作成したメモなども合わせて保管しておきましょう。

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